コラム
2021年1月22日
香道の世界ではよく知られている言葉でしょう。空が薫ると書いて「空薫(そらた(だ)き)」。香を焚いて室内に香りをゆきわたらせることです。平安時代、宮中では香はたしなみのひとつとされていました。自身のためはもちろん、訪れる人のためにあらかじめ香を焚いて部屋を香りで満たしたり、その香り
2020年12月25日
うつし世とは、生きている世界、現世のことです。周知の通り「現」とは「うつつ」、夢と現実を対比した「ゆめかうつつか」という表現はよく知られています。有名なのは『古今和歌集』にある歌、「世の中は夢かうつつかうつつとも夢とも知らずありてなければ」でしょうか。この世は現実なのか夢なのかわ
2020年12月9日
手と手を合わせる合掌の「掌」が「たなごころ」。手のひらのことです。古語では「手」を「た」、「な」を「の」と読むことから、「掌」とはつまり「手の心」。仏心を表す右手と、衆生(私心)を表す左手を合わせて拝めば、祈りになるというのもうなずけます。ひらひらと翻す様子から生まれたのでしょう
2020年11月21日
なんとも照れくさい、気恥ずかしい。鏡を見ずとも頬の赤らみがわかる。そんな様子が「面映(おもは)ゆい」です。面である顔が、ぽっと灯をともしたように赤みを帯びる。まばゆい光に照らされて、眩しそうに俯く姿が浮かびます。照れる様子に、面白がって囃し立てる人もいるかもしれませんね。「面白い
2020年10月31日
月影(つきかげ)とは、月の影であると同時に月の光でもあります。とりわけ歌に詠まれる月影は、夜空からふりそそぐ月の光を言うのでしょう。英語ならmoonligtと、はっきり月の光とわかりますが、光の対局にある影をも光とみるのは日本人ならではでないでしょうか。法然上人もこんな歌を詠んで
2020年10月11日
秋の季語にある「身に入む」、「入」を「し」と読ませて「身にしむ」です。五感で受け止めた風や光、香りなどを身内で深く感じる心を「身に入む」と言い表せば、なるほどそのとおり。目に見えぬものが身内に入り込んで心身を絡め取る。その瞬間、なにかに取り憑かれたような感覚をおぼえます。それが言
2020年9月27日
時の雨と書いて「しぐれ」。降ったり止んだり、時のまにまに降る雨のことを言いますが、日本人の耳にはどうやら、しきりに鳴く虫の声も雨の音に聞こえるようです。欧米人にはただの雑音としか聞こえないという虫の音。しかし私たち日本人は、古来より夏は蝉時雨といい、秋には虫時雨といいながら、虫の
2020年8月26日
夏の夜、川面に灯りをともすと光に吸いよせられるように魚が集まってきます。この灯火が「夜振火(よぶりび)」。古くは江戸時代からあるとされる川漁の方法のひとつで、「夜振」や「夜振の火」」とも合わせ俳句の季語にもなっています。――雨後の月誰ぞや夜ぶりの脛白き(蕪村)闇夜にともる月のよう
2020年8月4日
夏草の生い茂る炎天下では、熱気ととともにむせ返るほど草が香ります。これが「草いきれ」。草も暑さでほうっと溜め息を漏らしているのでしょうか。いつだったか、山に登っている最中、登山道の刈られたばかりの草いきれにおののいたことがあります。まるで草たちの屍の上を歩いているような恐ろしさ。
2020年7月15日
雲に鼓とくれば、鬼。「風神雷神図屏風」の雷神が浮かびませんか。そのとおり、「雲の鼓(くものつづみ)」とは「雷」のこと。雲にのって現れた鬼神は、握りしめたバチで連鼓を打ち鳴らします。ドドーン、ドドーンという激しい音が聞こえてきそうですね。大地を震わせ天をつんざく轟音は、きっと神様の
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