コラム

千秋楽

2021年10月1日

 「この相撲一番にて、千秋楽〜」という口上、耳にしたことはありませんか。相撲でおなじみ、場所最終日に行司が呼び上げる結びの触れです。相撲以外にも歌舞伎や芝居など、興行の最終日を千秋楽と言いますが、出どころは謡曲『高砂』の結末。一同が口上を述べ、太夫元がその舞を舞ったことがはじまりとも言われています。

 

―― さす腕には悪魔を払ひ
       納むる手には寿福を抱き

       千秋楽は民を撫で

       万歳楽には命を延ふ
       相生の松風
       颯々の聲ぞ楽しむ

       颯々の声ぞ楽しむ

 

 一説には、この謡が最後にうたわれることと、「秋」が「終」に「楽」が「落」に通じることから、最終日の意味として使われるようになったのだとか。

 

「秋」という文字は豊かに稔った稲をあらわしており、同じく「年」という文字も稲を意味する「禾」と「人」との組み合わせで「稔りの時」をあらわします。

 秋を「とし」と読ませることがあるのも、穀物がみのる「稔」を「とし」と呼び、それが「年」となったから。

 おそらく、まだ暦もなかった昔は、一年のサイクルを豊かな実りの秋を基準にしていたのだと思います。その名残なのでしょう。一年をひとつの季節にたとえるときは「秋」を使うのだそうです。

 

 豊かな実りをいただいたあとは天地に感謝し、新たな種蒔どきにむけて力を蓄え、次の秋の準備がはじまります。

「終わり」は「始まり」のはじまり。

 千秋のときを超えて、今につづく豊かな実りが、この先もずっとつづきますように……。

 (211001 第100回)

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