コラム
2022年5月16日
「翠雨(すいう)」とは、若葉どきに降る雨のこと。若葉雨や緑雨、青雨、青葉雨ともいい、まるで青々と萌えさかる若葉の熱をさますかのような雨の言葉です。呼び名ひとつで、まぶたの裏につややかに濡れた青葉がうかびませんか。雨の匂いにまぶたをひらけば、そこにも目に染みるような緑が滴っている。
2022年5月8日
文字からも、みずみずしい若葉の香りがただよってきそうな「薫風(くんぷう)」。新緑の季節にぴったりな言葉です。春風がピンク色なら、夏の風はみどり色でしょうか。風にゆれる緑葉はまだやわらかく、運ばれてくる香りも色も若々しい青年のよう。ふと、昭和をかけぬけた奇才の詩人、寺山修司がうかび
2022年3月28日
「手向草(たむけぐさ)」とは、桜、松、すみれの異称です。花を手向ける、供物を手向ける、神仏や死者の魂へささげものを差し出す仕草を「手向ける」と言いますが、手向草はその品々のこと。古くは布や麻、紙などが一般的でした。旅人が行路の安全を祈願して、導祖神にお供えしたり木の枝に結びつけた
2022年2月27日
あたたかな春の気配を感じながらも、肌に冷たい風が残る早春の朝、思いがけず氷の貼った面に出くわすことがあります。うっすらと下方を浮きあがらせて朝日にきらめく春の氷、「薄氷(うすらい)」です。かつては冬の季語だったようですが、冬から春に移ろうころに見かけることが多かったのでしょう、近
2022年1月17日
美しいものを花に喩えるのが好きな日本人は、内に篭りがちな寒い冬でも美しい花を愛でたいと思ったのでしょう。凍りつくような寒い朝、大地を覆い尽くすようにキラキラと霜が降り立ちます。この霜が「三つの花」です。これに対して雪は「六つの花」と呼ぶのですから、どんな季節にも悦びを見出そうとす
2021年12月20日
――銀も金も玉も何せむにまされる宝子にしかめやも(『万葉集』より)(しろかねもくがねもたまもなにせむにまされるたからこにしかめやも)子に勝る宝はないと歌った山上憶良のこの歌で、「銀」を「しろかね」と呼ぶのだと知った人も多いのではないでしょうか。「しろがね」と濁音で読むようになった
2021年12月13日
古来より花にちなんだ言葉は多いですが、「波の花」もその一つ。冬の荒波に打ち寄せられた白い泡を花に喩えて「波の花」といい、花柳界では「塩」の隠語としても使われます。古くは宮中に使えた女官たちが、「女房ことば」として上品に塩を波の花と言ったそうで、女房と言えば、かつては上官に遣える秘
2021年11月25日
秋の終わりと冬の始まりを知らせる冷たい北風が、「木枯らし」です。国字で「凩」と書けば、色づいた木の葉を散らしてゆく風が目に浮かびますね。木枯らしは何日も吹き続けるわけではなく、突然吹いてきたかと思うと、半日か1日ほどで吹き止み、翌日はきまって穏やかな小春日和になるそうです。秋と冬
2021年10月14日
――吹き来れば身にもしみける秋風を色なきものと思ひけるかな(紀友則『古今六帖』)身にしみる秋風を色なきものと歌った平安の歌人・紀友則。色艶やかに染まる錦の秋には、まるでそぐわない「色なき風」ですが、出どころは万物の成り立ちにありました。天と地の間に流れる精気、木・火・土・金・水の
2021年10月1日
「この相撲一番にて、千秋楽〜」という口上、耳にしたことはありませんか。相撲でおなじみ、場所最終日に行司が呼び上げる結びの触れです。相撲以外にも歌舞伎や芝居など、興行の最終日を千秋楽と言いますが、出どころは謡曲『高砂』の結末。一同が口上を述べ、太夫元がその舞を舞ったことがはじまりと
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