コラム
2020年8月26日
夏の夜、川面に灯りをともすと光に吸いよせられるように魚が集まってきます。この灯火が「夜振火(よぶりび)」。古くは江戸時代からあるとされる川漁の方法のひとつで、「夜振」や「夜振の火」」とも合わせ俳句の季語にもなっています。――雨後の月誰ぞや夜ぶりの脛白き(蕪村)闇夜にともる月のよう
2020年8月4日
夏草の生い茂る炎天下では、熱気ととともにむせ返るほど草が香ります。これが「草いきれ」。草も暑さでほうっと溜め息を漏らしているのでしょうか。いつだったか、山に登っている最中、登山道の刈られたばかりの草いきれにおののいたことがあります。まるで草たちの屍の上を歩いているような恐ろしさ。
2020年7月15日
雲に鼓とくれば、鬼。「風神雷神図屏風」の雷神が浮かびませんか。そのとおり、「雲の鼓(くものつづみ)」とは「雷」のこと。雲にのって現れた鬼神は、握りしめたバチで連鼓を打ち鳴らします。ドドーン、ドドーンという激しい音が聞こえてきそうですね。大地を震わせ天をつんざく轟音は、きっと神様の
2020年6月13日
五月の雨、「さみだれ」です。旧暦の5月、新暦では5月下旬から7月上旬にかけて降る長雨がそれ。梅雨のことを指しています。梅雨の季節に東北を旅していた松尾芭蕉も『おくのほそ道』で歌っています。――五月雨を集めて早し最上川雨を集めた川は膨れ上がり、押し出されるようにごうごうと音を立てて
2020年5月9日
小さな紫の花房が風にたなびいている姿が波を思わせたのでしょう。藤の花が風にゆれる様子を「藤波」と言いますが、かつては藤の花そのものを「藤波」と言い、『万葉集』や『後撰和歌集』などにもたびたび歌われています。――みな底の色さえ深き松が枝に千歳をかねて咲ける藤波(『後撰和歌集』よみ人
2020年4月12日
はらはらと舞い散る桜。零れ桜(こぼれざくら)です。日本人にとって、桜はもののあわれを誘う花。諸行無常の世界を瞬時に演じ見せてくれているようで、良寛さんの辞世の句が思い出されます。――散る桜残る桜も散る桜咲いては散り、散ってはまた咲く桜花。今を盛りに咲く花も、やがては零れて地に還っ
2020年3月27日
「おぼおぼ」という擬態語から派生したと言われる「朧(おぼろ)」。ぼんやりと、はっきりしない様子を表しています。ぼうっと霞みがかった月が浮かぶ「朧月夜(おぼろづくよ)」は、晴ればれとした月夜とはちがい、幻想的で、夢のなかを彷徨っているような気分になりませんか。物理学者の佐治晴夫さん
2020年3月8日
間と書いて「あわい」。古典読みなら「あはひ」。音の響きからでしょうか。「あいだ」と読むより、やわらかい感じがしませんか。日本人には馴染みの「間」は「ま」と読んで距離や間隔、あるいは時間、空間、余白などさまざまな意味を持ちあわせています。もともと「合う・会う」と字源が同じ「あわい」
2020年2月13日
日本には「たてる花」と「いれる花」があるといいます。神仏に立てて供える榊や檜、松などの常盤木が「たてる花」の原点で、この花を依代として天地をつなぎ、天と人をつなごうとする生け花の様式のひとつが、「たてはな(立花)」です。一方、「いれる花」とは、自分の好きな花を活ける「なげいれ」の
2020年2月6日
「いろは」と言えば、いろはにほへと。手習いの歌として知られる「いろは歌」は有名です。仮名47字、すべての文字を重複することなく網羅させた七五調のこの歌は、平安時代に生まれました。何かを覚えたり、習ったりと、ものごとの初歩の段階を「いろは」とあらわすのは、手習いで最初に書くのがこの
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