コラム
2022年6月11日
まばゆい日向とは対照的な、木々の下の暗い木陰が「木下闇(このしたやみ・こしたやみ)」です。とくに夏の木立が鬱蒼と茂る、昼もなお暗い様子をこういいます。「闇」という謎めいた言葉とはうらはらに、木下闇は静寂を愛する生きものたちの楽園なのでしょう。国上山西坂の中腹、老杉に囲まれた五合庵
2022年5月30日
突然の雨は、人を急かしたり、足を止めます。ちょっとした雨なら、軒下で雨宿りもいいですね。でも、長雨や激しい雨だと、そうもいきません。その場にとどまるよう、訪れた人を引き止めるかのように降ったり止んだりと降りつづける雨が「や(遣)らずの雨」です。雨なら仕方ないと、あきらめもつく。そ
2022年5月16日
「翠雨(すいう)」とは、若葉どきに降る雨のこと。若葉雨や緑雨、青雨、青葉雨ともいい、まるで青々と萌えさかる若葉の熱をさますかのような雨の言葉です。呼び名ひとつで、まぶたの裏につややかに濡れた青葉がうかびませんか。雨の匂いにまぶたをひらけば、そこにも目に染みるような緑が滴っている。
2022年5月8日
文字からも、みずみずしい若葉の香りがただよってきそうな「薫風(くんぷう)」。新緑の季節にぴったりな言葉です。春風がピンク色なら、夏の風はみどり色でしょうか。風にゆれる緑葉はまだやわらかく、運ばれてくる香りも色も若々しい青年のよう。ふと、昭和をかけぬけた奇才の詩人、寺山修司がうかび
2022年3月28日
「手向草(たむけぐさ)」とは、桜、松、すみれの異称です。花を手向ける、供物を手向ける、神仏や死者の魂へささげものを差し出す仕草を「手向ける」と言いますが、手向草はその品々のこと。古くは布や麻、紙などが一般的でした。旅人が行路の安全を祈願して、導祖神にお供えしたり木の枝に結びつけた
2022年2月27日
あたたかな春の気配を感じながらも、肌に冷たい風が残る早春の朝、思いがけず氷の貼った面に出くわすことがあります。うっすらと下方を浮きあがらせて朝日にきらめく春の氷、「薄氷(うすらい)」です。かつては冬の季語だったようですが、冬から春に移ろうころに見かけることが多かったのでしょう、近
2022年1月17日
美しいものを花に喩えるのが好きな日本人は、内に篭りがちな寒い冬でも美しい花を愛でたいと思ったのでしょう。凍りつくような寒い朝、大地を覆い尽くすようにキラキラと霜が降り立ちます。この霜が「三つの花」です。これに対して雪は「六つの花」と呼ぶのですから、どんな季節にも悦びを見出そうとす
2021年12月20日
――銀も金も玉も何せむにまされる宝子にしかめやも(『万葉集』より)(しろかねもくがねもたまもなにせむにまされるたからこにしかめやも)子に勝る宝はないと歌った山上憶良のこの歌で、「銀」を「しろかね」と呼ぶのだと知った人も多いのではないでしょうか。「しろがね」と濁音で読むようになった
2021年12月13日
古来より花にちなんだ言葉は多いですが、「波の花」もその一つ。冬の荒波に打ち寄せられた白い泡を花に喩えて「波の花」といい、花柳界では「塩」の隠語としても使われます。古くは宮中に使えた女官たちが、「女房ことば」として上品に塩を波の花と言ったそうで、女房と言えば、かつては上官に遣える秘
2021年11月25日
秋の終わりと冬の始まりを知らせる冷たい北風が、「木枯らし」です。国字で「凩」と書けば、色づいた木の葉を散らしてゆく風が目に浮かびますね。木枯らしは何日も吹き続けるわけではなく、突然吹いてきたかと思うと、半日か1日ほどで吹き止み、翌日はきまって穏やかな小春日和になるそうです。秋と冬
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