コラム

しろかね

2021年12月20日

―― 銀も金も玉も 何せむに まされる宝 子にしかめやも(『万葉集』より)

 (しろかねもくがねもたまも なにせむに まされるたから こにしかめやも)

 

 子に勝る宝はないと歌った山上憶良のこの歌で、「銀」を「しろかね」と呼ぶのだと知った人も多いのではないでしょうか。

「しろがね」と濁音で読むようになったのは近代になってからのこと。古くは「金」に対する「白金」という意味で、銀は「しろかね」と呼んでいたようです。

 

「しろかね」と耳にすると、都心の町の名前を思い出すと同時に、川端康成の小説『雪国』の冒頭の景色が浮かびます。
 
「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。……」
 
 まぶたの裏に、うっすらと底の方から浮かび上がる白い光を感じませんか。トンネルと夜に重ねられた暗闇に、白銀の世界は希望の兆しさえ感じます。

 燦々と照る夏の太陽が黄金ならば、きらきらと煌く冬の太陽は白金でしょうか。

 ひんやりと冷たい中に陽の光はあたたかい。暗く冷たい冬だからこそ、わずかな光がありがたい。はぁーっと吐いた息がほっこりした白い湯気になるのも、つないだ手にぬくもりを感じるのも、寒い冬であればこそ。
 そう思えば、綿雪がしんしんと降り積もる白金の冬景色も、あたたかく優しさに満ち溢れているような気がします。
(211220 第104回)

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