作家紹介

アーチスト写真

紅型で表す琉球の輝き

伝統を超えた色と型と光の饗宴

紅型作家

新垣 優香

ARAKAKI Yuka

急展開での紅型作家デビュー

「工房によって、制作スタイルは全然ちがいます。たまたまそこが自分に合わなかっただけなのかもしれませんが、それでも、自由に作品を作るということを考えると、やっぱり私は工房向きではないとわかりました。でも、工房で学んだことは結果的に良かったです。辛かったけれど、紅型をやめたいとは思わなかったですし、むしろもっと奥が深そうだと思いました」

 まったく異色の場所で気づいた本当の自分。居心地の良い場所だけでは気づかなかった正直な気持ち。紅型が好きだからこそ、もっと自由に表現したい。伝統にこだわるのではなく、表現というかたちで紅型の可能性を広げ、紅型を知らない人にもその魅力を知ってほしい。自分の作品がそのきっかけになれば……。もう一度、違うかたちで学び直そう。新垣は、沖縄県が主宰する伝統工芸指導所に足を運んだ。

 この指導所は現在「沖縄県工芸振興センター」と名を改め、伝統工芸の技術者および研究者の人材育成を行っており、紅型をはじめ、織物や漆芸、木工芸など工業産業の振興を図っている。そのため、それぞれの分野で独立を希望する人や新たに学び直しを試みる人への支援として、ある条件の下、1年間の授業料を無償で学びの場を提供する。通う人も学び方もじつにさまざまで、社会人もいれば主婦もいる。それぞれがそれぞれの目的に応じて学ぶというスタイルに、新垣の心は躍った。

「作品を作るほど、もっと表現したいと思うようになりました」

 自分を解放し、新たな気持ちで楽しく紅型に取り組んだ。1年後の2009年、新垣に大きな僥倖が舞い込んだ。毎年開催される卒業制作展で、出品した作品が大阪のある呉服商の社長の目に止まったのである。そして驚くことに、着物のデザインの依頼が入り、契約が決まったのだ。思いもよらないスピード展開で、新垣は紅型作家の道を踏み出した。

 

 小さなアパートで、新垣はひとり紅型の制作にとりかかった。作るのは主に着物や帯。呉服商の社長は、伝統にこだわらず自由に作っていいと言ってくれた。こんな風にしてくれとの指定もしない。作品を見ただけで全幅の信頼を置いてくれたのである。

「普通は『琉球びんがた』の認定証(マーク)がないと紅型とは認められず、なかなか正規の値段で買い取ってくれません。認定証をもらうには『伝統的工芸品』の検査を通す必要があり、色やデザインの指定と指導が入って指示されたとおりつくらなければならない。わたしの作品は個性的すぎて伝統工芸として認定はされなかったのですが、ありがたいことに、その社長は『そんな証明はいらない』と言ってくれて、認定証がないことも個性のひとつとして全部買い取ってくれました」

 着物も帯もどんどん作っていいよという社長の言葉に背中を押され、新垣は自由に思うまま作品を作りあげた。そのすべてを社長は買い上げてくれ、大阪と沖縄で初の個展と、大阪での紅型の体験教室まで開催してくれた。着物や帯以外にも作りたいものがあれば作ればいいとも言ってくれた社長の計らいで、かねてから作りたいと思っていたパネルづくりにも取り組んだ。これまで紅型とは認められず、自分のやり方に一抹の不安を抱いていた新垣だったが、自由な作品づくりによって失いかけていた自信も少しずつ戻ってきた。そして、自信の回復とともに転機はおとずれた。

 

 2011年、琉球銀行主催の「りゅうぎん紅型デザインコンテスト」で大賞を受賞したのである。審査委員は紅型の組合員ならびに理事長、紅型作家の巨匠たち、錚々たるメンバーが集う。

「20歳から出品し続けて、6年目にしてようやく大賞を受賞することができました。紅型と認めてもらえたことがほんとうに嬉しかったです。賞を獲得してから、もっと作品を作っていいんだと思うようになりました」

 このときの作品が、のちの新垣作品のベースにもなる艶やかな大輪の花々。審査委員たちは肝を潰し、各々が新垣に賞賛を贈った。ある大御所の作家は「来年も再来年も出し続けるように」と期待を寄せ、「次は新垣優香とわからない作品で」と暗に変化を促した。

 はたして新垣は期待を裏切らなかった。翌12年の同コンテストで、またもや大賞を受賞。2年連続大賞受賞という快挙を成し遂げたのである。今回の作品には、オオゴマダラが飛んでいた。

「前回の受賞のときに、得意の花のデザインではなく、これまでと違うことをしてみたら面白いんじゃないかとアドバイスがあったんです。沖縄には花以外にも自然がいっぱいあるので、モチーフ探しにでかけました。ガンガラーの谷に行った時、ガジュマルの森でオオゴマダラが目の前に飛んできて〝これだ!〟と思い、作品に取り入れました」

 伝統的な重ね型の技法に加え、独自で編み出した型染めの上にさらに型を重ね置くという技法によって大胆な構図に仕上がった。 

 花の絵柄を染め抜いた後、乾かした上から蝶の型染めをする。そうすることで奥行きとレースのような透け感、立体感が出る。ふわりと蝶が浮き上がるところなど、見る角度によってはステンドグラスにも見えなくもない。審査委員たちは、新鋭の紅型作家・新垣優香の才能を心から褒め称えた。

沖縄の伝統工芸である紅型に、独自の技法で新たな風を吹き込む新進気鋭の紅型作家、新垣優香さん。大胆なスタイルとデザインで描く紅型は、一目見ただけで彼女の作品だとわかる。師匠につかず、独立独歩で歩んできたからこそ生まれた紅型の新しい世界をご覧あれ。

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