作家紹介

アーチスト写真

ガラスで表現する〝柔らかさ〟

本場ヴェネチアで開花したみずみずしい感性

ガラス作家

植木寛子

Ueki Hiroko

短大を卒業後、単身渡欧し、やがてヴェネチアを拠点に制作を始めたガラス作家・植木寛子さん。「女性的なものが好き」という言葉どおり、ハイヒール、女神、クラゲなど、彼女の生み出す造形と色彩は妖しいほどに女性的である。

成熟した日本の第一世代

 ヴェネチアと日本を拠点に制作を続けるガラス作家・植木寛子の作品は、小気味よく常識を覆してくれる。ガラスという硬質な素材を用いて、モノの柔らかさや女性の美しさを表現しているのである。初めて植木の作品を見たときの印象は、「なんて奔放な形で、柔らかそうで、色彩が美しいのだろう」であった。本場ヴェネチアのガラスアートにはない、大胆さや斬新さがあり、それでいて見る者の心を和ませる独特の雰囲気を湛えていた。少女時代の限りないイマジネーションをなんのてらいもなく表現する無邪気さも感じられた。

 植木がガラスアートにおいて世界の中心といえるヴェネチアに単身乗り込み、大きな成果を収めている背景に、日本という国が成熟したことを合わせ見ることができる。

 ひと昔前まで、日本人は世界に出て行くことを臆する傾向があった。どんなに優れた成績を収めたプロスポーツ選手も、世界の舞台に挑もうと思う人は稀だった。ところが今は、なんら臆することなく世界の檜舞台に打って出て行く人が少なくない。

 植木寛子もそういう人たちの一人である。幼い頃から本物を愛で、自分が望む道をまっしぐらに歩むことのできる環境にあったというアドバンテージを活かし、存分に自分の能力を花開かせている。もちろん、環境が整っていても、本人の努力がなければ才能が結実することがないということは言うまでもないが……。

『カラーの靴  想像と理想の間』を実際に見ると、それが吹きガラスの手法で制作されたとはにわかに信じがたい。ヴェネチアのガラスアートはルーマニアの被せガラスに比べ、格段に表現の幅が広いが、それでもこの作品は常識破りである。どうしてこういう作品ができるのかといえば、「臆することがない」からだろう。自らのインスピレーションを肯定し、外国の伝統的な工芸という深い森に躊躇することなく分け入ることができたからだ。これもまた、日本人の懐の深さと言えるのではないだろうか。

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