美しい日本のことば

ほほえみ

2018年10月29日

 笑顔にもいろいろありますが、ほほえみ(微笑み)ほど日本的な笑顔はないのではないでしょうか。にっこりと静かにほほえむ人を見ると、不思議とやさしい気持ちになりませんか。さりげない美しさがあり、まるで野に咲く草花か、気品漂う山百合のよう。

 

「微笑み」は、もともと頬がゆるんだ状態を表す「頬笑む」が語源。ひらがなの「ほほえみ」は大和言葉で、中国から入ってきた漢語によって「微笑」となりました。

 今では好ましい場合に使われますが、昔は失笑や冷笑、苦笑など、あまり好ましくない笑い方も含め、かすかな笑みすべてを「微笑み」と言ったそうです。
 赤ちゃんや小さな生き物が戯れているのを見たり、草花が風にゆれている姿を見た時、ふと空を仰いだ瞬間、思わず頬がゆるむことはないでしょうか。

 幸せをまとった微かな笑みを表す「ほほえみ」という言葉は日本特有のもの。他国にはあまり見かけません。
 

 ほほえみで浮かぶ姿は、今上天皇の皇后、美智子様のお姿。菩薩様のような、控えめで静かな笑顔を絶やすことなくお顔に浮かべていらっしゃいます。ほほえんだお顔は、きっと、そのまま美智子様の素のお顔なのでしょうね。

(20181029 第11回 画:村上華岳「裸婦図」1920年 山種美術館蔵  重要文化財)

 

著者:神谷真理子

兵庫県姫路市出身。もの書き。
Chinomaサイトの「ちからのある言葉」、雑誌『Japanist』取材記事、保育園幼稚園関連の絵本など執筆。詩集『たったひとつが美しい』(神楽サロン出版)

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