美しい日本のことば

風光る

2021年4月1日

 うららかな春の陽射しの中をそよ風が吹きぬけると、あたり一面がキラキラと光り輝いて見えます。それが「風光る」。春の季語です。まるで風が光そのものであるかのように、春風は光に満ちています。
 
 ―― 日の春のちまたは風の光り哉(暁台)
 
 晴れやかな春の日に賑わう町は、まるで風もきらきらと光って見える。江戸中期の俳人、加藤暁台は、景気の良さを表すような賑やかな街並みに、光輝く春風を感じたのでしょう。

 草木の芽吹きはもちろん、人々のはじける笑顔はいっそう風光明媚です。

 
 長く寒い冬も終わるころ、朝露にぬれた草木の新芽の香りとともに、ほのぼのと夜が明ける朝の光に春の訪れを感じます。
 香りや光をつれて新しい季節の到来を知らせる風。一陣の風は光明でしょうか。風が立つところに何かが生まれる。

 風が輝いて見える日は、窓をあけて深呼吸してみてください。体の中をやわらかな風がすーっと通って、心地よい光に包まれますよ。
(210401 第87回)

著者:神谷真理子

兵庫県姫路市出身。もの書き。
Chinomaサイトの「ちからのある言葉」、雑誌『Japanist』取材記事、保育園幼稚園関連の絵本など執筆。詩集『たったひとつが美しい』(神楽サロン出版)

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