コラム

風琴

2021年2月19日

 風の琴と書いて「風琴(ふうきん)」、オルガンの和名です。器官という意味のオルガン(organ)は、パイプ菅に空気を送り込んで音を出すことから、パイプオルガンとも呼ばれます。
 

 奈良時代に雅楽とともに伝来した「笙」は、音の鳴る原理がオルガンと同じ。息を吐いたり吸ったりして空気の振動によって音を鳴らします。

 別名を「鳳笙(ほうしょう)」といい、姿形は翼を閉じた鳳凰のようであり、その美しい音色は鳳凰の鳴き声なのでしょうか、「鳳音」という言葉もあるようです。

 

 笙ではありませんが、日本最古の長編物語『宇津保物語』には風の名をもつ12の秘琴が出てきます。
「南風」「波斯風」「竜角風」「細緒風」「宿守風」「せた風」「山守風」「花園風」「都風」「かたち風」「織女風」。
 それぞれの奏者も決まっているこれらの琴の楽音は、人のみならず動植物までも感応させ、天変地異をも引き起こします。まさに風そのものですね。

 古代では霊鳥である「鳳(おおとり)」が風の神と信じられており、その後、鳳が竜に変わって「風」という文字が生まれました。

 

 ―― 琴の音に 峰の松風かよふらし いづれのをより しらべそめけむ(斎宮女院『拾遺和歌集』)

 

(琴の音が峰の松に風を送って鳴らしているようですが、一体、この妙音はどの琴の緒から出て、どこの山の尾から響いて混じり合っているのでしょうか)
 
 天地自然は音楽の始原。船乗りや移民、宣教師、旅芸人と、風のように旅をする彼らが手にしていたのも、手風琴と呼ばれるアコーディオンでした。
 さわさわ、そよそよ、びゅうびゅう、ごうごう……。

 耳をすませてみてください。風が音楽を奏でているのが聴こえませんか。
(210219 第84回)

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