コラム

面映ゆい

2020年11月21日

 なんとも照れくさい、気恥ずかしい。鏡を見ずとも頬の赤らみがわかる。そんな様子が「面映(おもは)ゆい」です。面である顔が、ぽっと灯をともしたように赤みを帯びる。まばゆい光に照らされて、眩しそうに俯く姿が浮かびます。照れる様子に、面白がって囃し立てる人もいるかもしれませんね。

 

「面白い」という言葉も「面が白い」、つまり顔が明るくなる、笑顔になるということ。他にも顔つきを表す「面目」「面影」「面差し」、面目を失うことを表す「面伏せ」など、日本語には顔にまつわる言葉が数多くあります。

 顔が広い、顔を立てる、顔に泥を塗る、顔色をうかがう……。「40を過ぎれば顔が名刺」と言うことも。

 

 免疫学者であり能にも精通していた多田富雄は、こんな言葉を残しています。

 

「面は、わずかな角度の変化や左右の運動で、隠微な、ときに強烈な感情を表現する。しかしその感情というのは、観客自身が感知するおのれの心の動きなのだ。面を自分の心という鏡に映してみて、観客みずからが作り出している表情なのである」

 

 面映ゆいのは、まわりの輝かしさに自身の未熟さを思い知らされるからでしょうか。

 内面の状態が顔という面に表れるのだとしたら、相対する人は自分の映し鏡。

 胸をはって面と向かえるように、いくつになっても心という鏡は綺麗に磨いておきたいものです。

(201121 第79回 絵:野村文挙「羽衣」)

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