コラム

星霜

2019年11月7日

 星の霜と書いて「せいそう」。年月のことです。一年に天をひと回りする星と、毎年降る霜をかけあわせて、月日がたったことを表す言葉になりました。 

 昔も今も変わらず移りゆく季節を感じるのは、自然の風物ではないでしょうか。

 燦々と降りそそぐ陽光がやわらぎ、肌をなでてゆく風がひんやりしてきたと思ったら、早朝にはもう霜が降りている。そんな光景に出くわすたびに「もうそういう季節なのか」と、刻々と過ぎゆく時を思います。

 在原業平の息子、棟梁(むねなや)は、積もる歳月をこう歌いました。

 

―― 白雪の八重ふりしけるかへる山 かへるがへるも老いにけるかな(「古今和歌集」)

 

 白雪が降り積もる山のように白くなった髪を見て、自らの老いを感じたのでしょう。髪の白さは幾重にもふりしける歳月の表れ。このときの「八重ふりしける」は、長い年月を表す「幾星霜」のほうがぴったりですね。

 

 過ぎゆく時を止めることはできません。天から降ってきた星屑のように朝日をあびてきらきらと輝く霜も、あっという間に溶けて消えてしまいます。

 つかの間の輝きだからこそ美しい。一瞬、一瞬の輝きが幾重にも降り積もった歲月は、やがて天に昇って夜空に瞬く星々になるのかもしれませんね。

(191107 第56回)

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