コラム

細小波

2019年8月19日

 細く小さいと書いて「いさら」。「少しの」という意味を添える接続後です。そこに「波」が付いて「細小波(いさらなみ)」。小さな波かと思いきや、実は、秋の風物詩である「霧」のこと。

 

 ちょうどお盆が終わった後、七十二候では、深い霧が立つ「蒙霧升降(ふかききりまとう)」時期に入ります。
 この霧が立ちのぼってゆく様子を、古人はお香の煙に見たて霧の香(きりのか)と呼びました。かつて、霧は人のため息が集まったものと考えられていたそうで、「嘆きの霧」として『万葉集』にも歌われています。
 

 心に溜まったもやもやを、ほーっと吐き出す。秋の空にたゆたう細小波は、連日の猛暑に疲れた人びとのため息なのでしょうか。
 さらりと肌をなでてゆく風にも秋を思わせる瞬間があり、もうもうと立ち込めていた草いきれも、心なしか落ち着ついて、芳しい霧の香が空をおおいます。
 
 いさらなみ晴れにけらしな高砂の 尾の上の空に澄める月かげ(源師俊)
 
 霧が晴れれば、月も煌々と輝きます。疲れたら、我慢しないでほーっと一息ついてください。心の霧も晴れますよ。

(190819第52回)

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