コラム

かんばせ

2019年4月25日

 とりどりの色でにぎわう百花繚乱の季節。花のかんばせもにこやかです。「かんばせ」とは顔のこと。泣いたり笑ったり怒ったり、天気ひとつで色を変えるかんばせには、見ているほうもついついつられてしまいますね。

 顔、顔容、花顔、貌、面など、「かんばせ」と読ませる漢字はいくつもあり、紫式部や芭蕉をはじめ、文豪たちも場面に応じて「かんばせ」を使い分けていたようです。

 

― その気色(けしき)窅然(ようぜん)として 美人の顔(かんばせ)を粧う。

 

『奥の細道』の松島の章の一文です。松島を旅した芭蕉はその美しい景色に魅せられ、中国の洞庭湖や西湖にもおとらない日本第一の風光であると松島をたたえました。

 

 顔は名刺といわれます。人もモノも、第一印象でそのもののおおよそがわかります。そこから先は、興味のあるかなしか。惹かれるところがあれば、顔色をうかがいながらも分け入ることもあるでしょう。

 人の心をうつのは、ただ姿形の整いだけではない、内から滲みでてくるそれ本来の魅力。そのものを包み込んだ顔は、なにを包むかで変わります。

 包みから伝わるぬくもり、開いた瞬間笑顔になるような包みなら、もらった相手も嬉しいですね。

(190425 第42回)

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