コラム

つづら折

2018年12月28日

 くねくねと幾重にも曲がりくねった道を「つづら折(おり)」といいます。日光のいろは坂がそうですね。漢字では「葛折」や「九十九折」と書きます。絡み合ったツヅラフジの蔓を見立てて葛折、数が多いことを示す「九」をあて、さらに強調した「九十九」を使って九十九折に。

 

 鞍馬寺につづく竹林のつづら折は、清少納言が『枕草子』で「近うて遠きもの」として記しています。
「北山のなにがしかの寺」につづく、つづら折の坂下を眺めていたのは、療養に訪れていた光源氏でした。この寺こそ鞍馬寺。仁王門を入り、坂の上に立つ由岐神社から本殿までの道は、直線にすればさしたる距離ではありませんが、つづら折を登ってゆかねばならないとなると、たしかに近くて遠きもの。
 坂下のとある屋敷で、生涯の伴侶となる幼子の紫の上を見とめた光源氏もまた、恋い慕う藤壺を、近くて遠きものと感じていたのかもしれません。

 

 人の一生はつづら折のようなもの。まっすぐに到達してしまうより、幾重にも曲がりくねった道を、景色を眺め愉しみながら歩きたいものです。
(20181228 第26回)

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