コラム

六つの花

2018年12月11日

 花にたとえられることが多い、雪。「六つの花(むつのはな)」もそのひとつ。6角の結晶が空から舞いおり、冬ざれの木々に降り積もる様子は、たしかに白い花が咲き誇っているようにも見えます。

 

 他にも、銀花、寒花(かんか)、天花(てんか)、花弁雪(はなびらゆき)、豊作を呼ぶめでたい花という意味の瑞花(ずいか)に、香りのない花という不香(ふきょう)の花と、雪をいろいろな花に見立てた先人たち。

 厳しい寒さの中にあっても、それを楽しむ心のゆとりがあったのでしょう。垂れ込めた雲の向こうには、きっと美しいお花畑があるにちがいないと。

 

 そういえば、人にも「六根」といわれる角があります。眼、耳、鼻、舌、身の五感と、心という意の6つを仏教用語で「六根」と言います。修験者が「六根清浄(ろっこんしょうじょう)」と唱えながら山を登っているのを見かけたことはありませんか。

 木の根が環境に左右されやすいように、人の6つの根はそれ以上にあやふやなもの。根を清めるために、厳しい修行に励むのだそう。

 木の根っこは見えませんが、樹形を見れば、なんとなくその根の状態も想像がつきます。

 それは人も同じ。その人を見れば、何を見て、聞いて、匂い味わい、感じているのかが、自ずと醸しだされます。

 

 たとえ暗雲が垂れ込めようと、その向こうにはあたたかい光が満ちている。天から六つの花が舞い落ちるように、わたしたちもそれぞれの美しい花を咲かせるようにと、6つの根を与えられて地上に降りてきたのかもしれません。

(20181211 第23回)

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