コラム

室礼

2018年12月7日

 門松、しめ縄、鏡餅、豆と鰯の頭と柊の枝、雛人形に五月人形、七夕飾り、盆灯篭、月見団子に千歳飴・・・。

 古くから伝わる年中行事に欠かせないのが、行事にちなんだお飾りです。家の内と外、とりわけ室内を季節のもので装うことを「室礼(しつらい)」と言います。

 室礼のはじまりは平安時代。貴族たちが住んでいた寝殿造の邸宅を、美しい装いでしつらえたことに端を発します。

 

 ― 南の御殿の西の放出に御座よそふ。屏風、壁代よりはじめ、新しく払ひしつらはれたり。(『源氏物語』若菜上巻)

 

 など、平安貴族の雅な世界を描いた『源氏物語』には、「しつらい」「しつらう」の言葉が数多く登場しますが、このときの「しつらい」は「設い」。それが「室礼」に変わったのは室町時代からのこと。建物が寝殿造りから書院造りへと移り変わり、 美しくしつらえることを目的とした「床の間」が出来てからです。

 

 軸や花、器などが飾られる床の間は、何気ない日常の中にあっても、なぜかその場所だけは身を正すような神聖な空気が漂っています。もともと床の間は神様と人間が対面する場所、結界を意味しているからなのでしょう。

 

 二十四節気、七十二候という季節の移り変わりを暮らしの中にも取り入れてきた先人たち。彼らが伝え残してくれた衣食住にかかわる伝統文化は、人は自然とともに生きているのだということを思い出させてくれます。

 

 季節の花や果実を飾るだけで、空間も気持ちも変えてくれる室礼。

「季節を感じて自然体で生きなさい」

 ご先祖様たちから、そんな風に言われているような気がしてなりません。

(20181207 第22回 写真:「室礼三千」より)

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