コラム

桂の影

2018年11月17日

  桂の影(かつらのかげ)とは、月の光、または月そのものの姿のこと。中国の古い伝説によると、月には大きな桂の木があるとされていました。影はもともと光のことで、古来より月を愛でてきた日本人は、月に心の内を重ねて歌にしました。

 

−    月のすむ 川のをちなる里なれば 桂の影は のどけかるらむ

 

月が澄んで見える桂川の向こうの里なのだから、月の光をゆっくりと眺められることであろう。

 

 これは、『源氏物語』の「松風」の巻で、冷泉帝が光源氏に宛てた歌。光源氏が別邸である桂の院で宴を催していた最中に届けられました。桂の院は、今の桂離宮に当たる場所。京都西京区の桂という地名は、月の名所であることから中国の故事に習い名付けられたそうです。

 

  ちなみに、桂の木といっても、日本の桂と中国のそれとは別の木なのだとか。

 とはいえ、香り高い桂の木。ふりそそぐ月の光は、かぐわしい香りに違いありません。

 

 月の名所である桂の院にいた光源氏も、きっと、かぐわしい香りを漂わせていたことでしょう。

 光源氏と桂の影(光)。月をかけて冷泉帝に歌わせた、紫式部の感性には驚かされます。

(20181117 第17回 写真:NHK知られざる月の桂離宮より)

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