コラム

縁の色

2018年11月13日

 縁(えにし)の色と書いて、縁の色(ゆかりのいろ)と読みます。これは、紫色のこと。紫色で「ゆかり」と言えば、塩漬けして乾燥させた赤紫蘇(あかじそ)のふりかけがありますね。これは、その名のとおり、紫色にあてたものです。

「紫」は本来、「紫草(むらさきぐさ)」のことを言います。紫草は群れて咲く草であることから「群咲(むれさき)」と呼ばれ、しだいに「むらさき」へと変わったそうです。
 夏に白い花をつける紫草ですが、根からとれる染料は紫色。万葉の頃は、紫色はもっとも高貴な色として扱われ、紫草も同様に貴重な草とされていました。

 

−     紫の 一本(ひともと)ゆゑに むさし野の 草はみながら あはれとぞ見る (『古今和歌集』よみ人知らず)

 

 紫草が一本あるだけで、武蔵野のすべての草がいとおしく思う・・・。
 
 たった一本の草がそこに生きている幸せを思うとき、その草を生かしている風や虫やまわりの草木たちのことも愛おしくなります。
 それは、人もおなじ。かけがえのない人の幸せを思うとき、その人のまわりにいる、ご縁ある人たちの幸せも願うことでしょう。
 ひとりの人を思う心は、すべての人を思う心に広がってゆく。縁の色は、だれかの幸せを願う色だったのですね。
(20181113 第16回 写真:『王朝のかさね色辞典』紫根染/紫紅社より)

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