コラム

葛の裏風

2018年11月10日

 風がわたると、ひらりとひるがえって白い葉裏を見せる葛。この銀色にかがやく秋風を「葛の裏風(くずのうらかぜ)」と言います。

 真夏の炎天下で、色濃い姿をあちこちで見かけるほど生育力が旺盛な葛は、秋になるとワインレッドの美しい花を咲かせます。

 大きな葉の裏に隠れてちらちらと小さな姿を見せるこの花は、秋の七草のひとつ。目立たなくてもその香りは花の色と同じ、ワインのような芳香だとか。
 

 葛といえば、葛餅や葛湯などは口に美味しく、風邪薬の葛根湯(かっこんとう)は口に苦しと、その根は嗜好や薬としても大活躍。また、つるは縄として、茎の繊維は葛布(かっぷ、くずふ、くずぬのなど)にと、古くから葛は人びとのくらしに寄りそってきました。
 ただひとつ、困ったことに、重宝がられることに気を良くしてか、あちこちと触手を伸ばしてしまうよう。

 

−    秋風の 吹き裏返す 葛の葉の うらみてもなほ うらめしきかな

 

 と、『古今和歌集』で詠んだのは平貞文。自分に飽きて心変わりした女性に対する恨みなのでしょうか。

 

 生命力あふれ、どんな場所でも気高く美しく生きる女性は多くの人を魅了します。それだけに、恨みを買うこともあるのかもしれませんね。
(20181110 第15回)

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