コラム

明鏡

2018年10月20日

 明鏡とは、一点の曇りもない鏡のこと。そこに静かにたたえた水が合わさり、「明鏡止水」という、邪念のない、澄みきって落ち着いた状態を表す言葉が生まれました。
 かつて、まだ青銅の鏡ができる前、使っていたのは水鏡でした。
 静かな水面であれば、はっきりとありのままの姿が映りますが、わずかな風がすべるだけでゆらぐ水面は美しい景色でさえもゆがんで映し出されます。
 西行は「山家集」で水辺に映る女郎花(おみなえし)を女性と見立て、水鏡に自分の姿を映す女性をこう謳っています。

 

 池の面に影をさやかにうつしても 水鏡みるをみなべしかな
 

 「明」という字は、もともと「月の光」を意味します。「日」は太陽というよりも光り輝くことを意味するために付け加えられたのだとか。
 静かな水面に映る美しい月影にあこがれ、明鏡と呼んだ古の人たちもまた、揺らいだり波たつ心の水鏡に手を焼いていたのかもしれませんね。
(20181020 第8回)

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