コラム

陰翳

2018年10月14日

 陰翳とは、光の当たらない暗いところ。あるいは光がつくる影のこと。障子に映るぼんやりとした薄灯りや、窓から差し込む月あかり、ろうそくのゆらめく灯りは日本人が好む光。煌々とまばゆいばかりの電気の光よりも、なぜか心が落ち着きます。すべてをさらけ出さない、日本人の美意識の表れでしょうか。

 

 陰翳といえば谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』。その中で、谷崎は日本の美をこう語っています。

「美は物体にあるのではなく、物体と物体との作り出す陰翳のあや、明暗にあると考える。夜光の珠も暗中に置けば光彩を放つが、白日の下に曝せば宝石の魅力を失う如く、陰翳の作用を離れて美はないと思う」

 

 蒔絵や螺鈿が美しいのは、吸い込まれるような漆黒の闇の作用がはたらき、沈み込む陰翳から浮きあがった光をそこに見るからではないでしょうか。

 なんでもないところに光陰を見、美を創造するのが日本人なのでしょう。

(20181014 第6回)

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