美しい日本のことば

野分

2018年10月2日

 野分(のわき)とは秋、野原の草木をかき分けて吹く暴風や台風をいいますが、昨今の野分は叙情的な趣を凌駕しているようです。いにしえより日本列島は自然の恩恵を受け、また脅威にもさらされる国ではありますが、今年は自然災害によって多くの犠牲者がでてしまいました。衷心よりお悔やみ申し上げます。

 それほどに仕打ちを受けても、私たち日本人は自然への畏敬の念を止めることはできません。野分という、人間に災禍をもたらす風さえも日本人、とりわけ文学者の心をかきたてるようです。

『源氏物語』では五十四帖の巻名に使われ、夏目漱石の作品にも同名の小説があります。渡辺淳一も『野わけ』という小説を書いています。

 自分たちにとって恵みであっても害であっても心情を寄せる、これも日本人の心性のようです。

(20181002 第2回 画像は岩井綾子作『緑の庭』)

 

著者:神谷真理子

兵庫県姫路市出身。もの書き。
Chinomaサイトの「ちからのある言葉」、雑誌『Japanist』取材記事、保育園幼稚園関連の絵本など執筆。詩集『たったひとつが美しい』(神楽サロン出版)

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