コラム

たてはな

2020年2月13日

 日本には「たてる花」と「いれる花」があるといいます。神仏に立てて供える榊や檜、松などの常盤木が「たてる花」の原点で、この花を依代として天地をつなぎ、天と人をつなごうとする生け花の様式のひとつが、「たてはな(立花)」です。

 一方、「いれる花」とは、自分の好きな花を活ける「なげいれ」のこと。茶の湯に見られる花がそれ。花人の川瀬敏郎さんいわく、たてる花は「公」で、いれる花は「私」なのだとか。どちらがいいと言うわけではなく、どちらも日本の花のありかたであり、場面に応じて使い分けてきた日本独自の花の姿だそうです。織物でいえば、たてはなが縦糸、なげいれが横糸、というわけです。
 

 茶柱が立つ。見立てがいい。匂い立つ。立春、立夏、立秋、立冬。日本人はとかく「立つ」ことに神聖性を感じます。日本が「縦」の文化だからでしょうか。神社の構造、たて文字の連なり、着物の反物、帯、線香、すのこ、よしず、腰を立てる、相手を立てる、連綿とつづく血脈など、日本の美は「たて線の美」とも言えますね。
 
 形見とて 何か残さん 春は花
 山ほととぎす 秋はもみじ葉 (良寛)
 
 春夏秋冬、それぞれの時節が「なげいれ」なら、古よりめぐる季節は「たてはな」でしょうか。

 いまこのときの花に思いをよせるとき、わたしたちは遠い昔の人たちと出会っているのかもしれません。
(200213 第67回 写真:川瀬敏郎『一日一花」より)

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