美しい日本のことば

柳眉

2020年1月21日

 柳に眉と書いて、「柳眉(りゅうび)」。小筆でさっと描いたような、細くて美しい眉を、昔の人はこう呼びました。
 眉だけではありません。細くてしなやかな腰のことを「柳腰」、長く美しい髪は「柳髪」、細面の美しい顔を「柳顔」と、柳は美人の象徴でもあったのです。
 鏑木清方、上村松園などの美人画にみられる女性たちがそう。ほそっりとしなやかな姿形は、たしかに柳のように映ります。
 このときの柳は、もちろんシダレヤナギ。細長く枝葉を垂らしてゆらゆら風にゆれる様は優美です。

 

 ―― きぬぎぬのうしろ髪ひく柳かな 
   見返れば意見か柳顔をうち

 

 川柳にも歌われている遊郭の門口にある「見返り柳」。名残惜しげに振り返る客に、「遊んでないで早くおかえり」と顔をうつ柳は、もしかすると柳眉を逆立てる妻か、あるいは遊女たちか。
 柳の枝に雪折れはなしと、降り積もる雪にも耐え忍ぶ柳の枝も、がまんの限界はあるのでしょうか。優美にしなやかに生きる柳ですから、怒りすらも風にまかせて受け流してしまうのかもしれませんね。

(200121 第64回  鏑木清方『築地明石町』)

著者:神谷真理子

兵庫県姫路市出身。もの書き。
Chinomaサイトの「ちからのある言葉」、雑誌『Japanist』取材記事、保育園幼稚園関連の絵本など執筆。詩集『たったひとつが美しい』(神楽サロン出版)

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