コラム

まほろば

2019年6月3日

 日本人であれば、知っておきたい言葉のひとつに「まほろば」があります。優れた良い場所、秀でた国土、という意味です。
『古事記』の中で、倭建命が詠んだ歌はあまりに有名ですね。その歌に「まほろば」が出てきます。

 

― 大和は 国のまほろば たたなづく 青垣山ごもれる 大和し美(うるわ)し
 
 天皇の命により、日本各地へ国土平定に向かった倭建命。しかし、戦につぐ戦で精根尽き、とうとう鈴鹿の山で病に倒れてしまいます。故郷への帰還は叶わないと悟った倭建命が、遠く懐かしい故郷の大和国を偲んで詠んだのがこの歌です。
 青々と茂った山に囲まれた、もっとも優れた美しい国こそ、わが故郷、大和の国であると。

 

 大和とは、現在の奈良県。同県桜井市には、文豪川端康成の歌碑が残されています。奇しくも、この歌を刻んだ三ヶ月後に、川端は自死を選んでこの世を去ってしまいました。

 

 史籍から大和国が奈良県であることは事実ですが、「大和の国」と言えば「日本」を指す言葉であることは誰もが知るところでしょう。
 わが国、日本が「まほろば」であるなら、そこに住むわれわれ日本人も「まほろびと」として、胸を張れるようにしたいですね。
(190603 第46回)

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