美しい日本のことば

一寸

2019年2月6日

 古い書物でよく見かける「一寸」。「ちょっと」と読みます。文豪たちが好んで使ったようですが、これは当て字。あっという間に過ぎ去るからでしょうか、「鳥渡」と書いても「ちょっと」と読むのだとか。

 

 一寸は、長さで言えば3.03センチメートル。尺の10分の1の長さです。

一寸と言えば、昔話の「一寸法師」。小さな体で大きな鬼を退治した小さきヒーローは、その後、助けた姫によって助けられ、出世街道を歩んでゆきます。
 

 ほんのわずかな差、ちょっとしたことが運命を変えることはよくあります。モノ作りのプロである職人たちは、ほんのわずかなちがいを見逃しません。手の感覚、舌の感覚、耳の感覚など、素人にはわからない微妙なちがいを見極めます。そのちがいが、格別な美を生み出すのです。
 

 ほんのちょっとの匙加減で、大きなちがいが生まれる。見落としがちな「ちょっと」した部分を、尺をとって丁寧に見つめてみてください。他とはちがう、オリジナルが見つかるかもしれませんよ。
(190206 第31回)

著者:神谷真理子

兵庫県姫路市出身。もの書き。
Chinomaサイトの「ちからのある言葉」、雑誌『Japanist』取材記事、保育園幼稚園関連の絵本など執筆。詩集『たったひとつが美しい』(神楽サロン出版)

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