コラム

星の林

2018年12月1日

−    天の海に 雲の波立ち 月の船 星の林に 漕ぎ隠る見ゆ

(広大な天の海に波立つ雲。その上を月の船が渡って星の林に隠れてゆく)

 

『万葉集』にある柿本人麻呂の歌です。天を海に見立て、雲を波に、月を船に、群がる星々を林に見立てた感性には驚くばかり。星月夜の下で夜空を眺める人麻呂の様子が目に浮かぶようです。

 

「星」という字は、夜空に散らばった光を表す「晶」に、生命の誕生を意味する「生」が合わさったもの。林には「生やし」の意味があり、ものごとや仲間が集まっているところを指しています。

 星空には星の林だけでなく、糠のように細かく散らばった糠星(ぬかぼし)や、美しく輝く煌星(きらぼし)もあり、神話の神々や動物、器などに見立てたいくつもの星座も数多く見られます。ちなみに、星座のことを「星の宿り」とも言うのだとか。夜空には無数の命が宿っているのでしょうか。

 

 ひとつとして同じかたちのものはない星々が天を照らしているように、わたしたち人間もまた、それぞれちがった色と形と大きさで、林となり森となって地上を照らしているのでしょう。
(20181201 第20回)

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